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JNRSメールニュース 第14号 (2017/7/31)

 

目次

(14-01)第8周期の元素探索への挑戦-GARIS-IIによるCn合成の検証
(14-02)京大原子炉 3年ぶり運転再開
(14-03)メスバウアー分光の原理と基礎的実験法を初歩から学ぶ講習会の開催

 

(1401)   第8周期の元素探索への挑戦-GARIS-IIによるCn合成の検証

新元素探索は、第7周期の全元素の発見・命名が完了した現在、第8周期が最前線のターゲットとして視野に入ってきた。2017年7月21日、理研から「新元素探索へ向けて気体充填型反跳分離器GARIS-Ⅱが本格始動-112番元素コペルニシウム合成の検証に成功-」と題するプレスリリースがあった。発表者は、仁科加速器研究センター 超重元素研究グループ 超重元素分析装置開発チーム研究員・加治大哉氏、同チームリーダー・ 森本幸司氏、超重元素研究グループディレクター ・森田浩介氏である。加治大哉氏は、日本放射化学会会員でもある。
 理研を中心とする研究グループによる原子番号113のニホニウムNh(113))の合成・確認に、GARIS(気体充填型反跳分離器)が重要な役割を果たしたことは、本会会員には既によく知られたことである。GARISを用いて、グループはコールドフュージョン(鉛やビスマスを標的とした重イオン融合)によって合成されるHs(108)からNh(113)までを検出して重要な成果をあげてきた。Nhを越えた原子番号の元素の合成にはホットフュージョン(アクチノイドを標的とした重イオン融合)反応が重要となるのであるが、GARISは、Rf(104)~Bh(107)、Lv(116)のホットフュージョン合成とその確認にも力を発揮してきた。一方で、ホットフュージョン実験に特化し、さらに高性能化した装置であるGARIS-IIの開発も進められてきた。
今回のプレスリリースは、理研重イオン線形加速器RILACからの大強度48Caビームと238U標的とのホットフュージョン反応[238U(48Ca,3n)283Cn]により283Cn(112)の合成・確認に、GARIS-IIを用いて成功した、というものである。この成果は、GARIS-IIの高性能が第8周期(Z=119以降)の探索に十分なものであることを示した。
プレスリリースと時を同じくして、加治氏らは本件について論文を日本物理学会の欧文誌(online)に発表した[2]。共同著者は、理研、山形大学、埼玉大学、新潟大学、九州大学の所属であり、多くは日本放射化学会会員である。
[1] 理研プレスリリーリス2017.7.21
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170721_2/
[2]  Daiya Kaji1, Kouji Morimoto1, Hiromitsu Haba1, Yasuo Wakabayashi1, Mirei Takeyama, Sayaka Yamaki1, Yukiko Komori, Shinya Yanou, Shin-ichi Goto, and Kosuke Morita, "Decay Measurement of 283Cn Produced in the 238U(48Ca,3n) Reaction Using GARIS-Ⅱ",
Journal of the Physical Society of Japan Vol.86, 085001 (2017)
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.085001
(YS)

 

 (1402)    京大原子炉 3年ぶり運転再開

京都大学原子炉実験所の川端祐司所長の会見がNHKテレビ(2017.6.21関西地区)等で報道されていたが、福島原発事故の後に出来た新しい規制基準に対応するため、運転を停止していた、大阪・熊取町の京都大学原子炉実験所の、最大出力100Wの研究用原子炉[KUCA]が、新たな安全対策等の結果、2017年6月20日、原子力規制庁の最終的な検査に合格し、同月21日、3年ぶりに運転を再開した。
 21日午後2時半ごろ、京都大学の教員が制御室にあるレバーを操作して、核分裂を抑えていた制御棒を炉心から引き上げ、運転を再開させた。そして、およそ20分後に、出力が一定になり、核分裂反応が連続する「臨界」の状態になった。
 新しい規制基準が出来てから、研究用原子炉が運転を再開するのは、近畿大学の原子炉に続き2基目となる。
[KUCA]では、21日から溶けた核燃料を安全に取り出すための研究が行われるほか、7月には、原子炉を使った学生の実習も再開するということである。共同利用のスケジュールなどの案内は、http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/CAD/index.html を参照されたい。
  [KUCA]は臨界集合体実験装置でありhttp://www.rri.kyoto-u.ac.jp/CAD/abstract.htmに示されているように、原子炉の核特性に関する基礎研究、開発研究および教育訓練を行うことを目的とした炉である。京都大学原子炉実験所の、もうひとつの研究用原子炉、[KUR]熱出力5,000 kW、平均熱中性子束約3×1013 n/cm2s の原子炉は引き続き運転を停止している。京都大学は、ことし8月の運転再開を目指しているが、特に放射化分析利用の方々には絶対の再開が望まれているところである。
(YW)

 

(1403)   メスバウアー分光の原理と基礎的実験法を初歩から学ぶ講習会の開催

日本メスバウアー分光研究会は、新たにメスバウアー分光法を新たな研究手段として活用したい研究者、初学者を対象に講習会を開催する。日本メスバウアー分光研究会としても初めての試みである。
 2017年8月7日、8日の両日、東京理科大学森戸記念館(東京都新宿区)で行われる。初学者への講習プログロムは、以下の2つのタイトル、講習者である。
「メスバウアー分光法の原理」山田康洋 博士 (東京理科大)、「メスバウアースペクトル測定法の基礎 (透過法、散乱法、発光法、転換電子による表面分析法)」 野村貴美 博士 (明治大)
これ以外にも、いくつかのメスバウアー分光を利用した最前線の研究紹介の講演が行われる予定である。詳細は、下記のWEB siteを参照されたい。
http://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/chem/ichem/moss/ws01.html
(YS)